ただ、これまで接してきた人とは違って下心どころか無理に仲良くすらなろうとしない態度に期待が無い訳ではなかった。もしかしたら柏崎先生は他の人とは違って本当に変な事をしないのではないか。そんな期待が心の奥底にほんの少しだけある。

「ほれ、クリスマスプレゼント」

そう言って先生が砂浜に置いたのは温かいココアの入った缶だった。未開封のままにされたココアの缶にあるリングプルの穴には蝶結びされた赤いリボンが付いていた。

「可愛い・・・」

私は、久しぶりに人目を気にせずに笑った。柏崎先生が結ぼうと必死になっている光景が普通に想像できてしまって、つい笑ってしまったんだ。でも、柏崎先生は笑った私を茶化そうとしなかった。ケタケタと一緒に笑って、寒さを吹き飛ばしてくれたんだ。

「案外器用だろ~?」