溝を埋めて、昔のように仲の良い友達に戻れるんだろうな。千里が健の恋人になる訳じゃないのに、胸の奥がキュッと苦しくなった。
健は歯止めが利けば取り合われるくらい良い奴だ。男の俺でも惚れかける時があるくらい格好良い部分もある。その良さを知っているからかもしれない。健の良さを知っているから溝を埋めて友達に戻った時、恋人にまでなってしまうのではないかと不安になっているのかもしれない。

「わーった。学校祭が終わる前に自分からもちゃんと謝れよ。それが出来るんなら伝えておいてやる」

文句を言って取り消してくれないかと思ったんだ。俺以外の教師や生徒なら、千里がまともに話を聞く事があまりないだろうし友達に戻る可能性は低くなるだろう。けれど、俺が謝っていたと言えば見直して健への見方を変えてしまうかもしれない。最近の千里は俺の話はちゃんと聞いて受け止めてくれるようになってきていたから、余計に不安だった。