恋人でもない俺が下の名前で呼んだ所で何だこいつって引かれて終わりだろう。俺がそう呼べるのは程遠い、手の届かない未来かもしれないと思うと落ち込まずにはいられなかった。

「自分で謝ってみたらどうなんだ?お前だって高校最後の学校祭だから、島岡に楽しんで欲しかったんだろ?」

図星のため息なのか、落ち込んだため息なのか。電話越しに吐いた健の息に力がなかった。言わなくて良い事を言ってしまっただろうかと後悔していると、健はため息の意味を説明してくれた。

「苦手だろ?・・・あいつ、俺の事怖がってっからさ。・・・変に話し掛けて、気を使わせたくねぇんだ。あいつ、昔からそうだからさ。・・・だから、カシザキから言っておいてくんねぇかな。頼む」

自分の気持ちをちゃんと伝える事が出来たら、健と千里の間に出来た溝も埋められるんだろうな。