祖父母の家を出てから高校へ行かないでサボろうかとも思った。けれど、狭い田舎町であるこの町で高校の制服で歩いているのはアイドル並みに目立ってしまう。だから、サボるにもサボれなかった。
ただ、1つだけ幸いなのは保健室登校をしているとバレていない事。昔から体が弱くて風邪を引きやすいせいか、体調を崩して保健室にいる事が多いという解釈で祖父母にも校内の生徒にも知れ渡っていた。
不思議な事があるものだと思いながら放課後になるともはや軽音部になっている吹奏楽部に私は入っていため、音楽室に顔を出す。そこではただ、メンバーの曲を隅で聴いているだけで空気になっている。そして、部活が終わりやっと帰宅する。
祖父母に話す高校の出来事は全て保健室から見た景色や部活中の風景をあたかも自分が参加していたかのように話す。けれど、実際の所は第三者としてただ見ていただけ。胸を張って話せるような出来事は何一つとして持ち合わせていなかった。それどころか、ろくに話す事も出来ない私に飽きたらしい。高校の生徒が仲良くなろうと私に話し掛けてくる事はなくなった。