隼人は知っていたんだ。彼女がギターを弾ける事を知っていた。高校最後の1年、好きな音楽で思い出作らなくて良いのかと心配していたんだ。自分が弾くと早く名乗りを上げないと、新しいメンバーが来てしまうと気にかけていてくれたんだ。

「!そのギター・・・!」

アコースティックギターに気が付くと千里は俺に触れるなり、ギターをバッグから取り出して壊れている場所がないか調べ始めた。顔を近付けたり、光に当てたりして新しい傷が出来ていない事を確かめていたんだ。
そこまで焦られると酷い事をしてしまったと反省せずにはいられない。けれど、彼女は新しい傷が出来ていない事を知ると肩を撫で下ろして凄く安心した表情を見せてくれた。
彼女の表情が変わる度、彼女を愛しているのだと実感させられている俺がいた。けれど、それと同時に叶わない恋をしているのだと思い知らされている俺もいた。焦らされ、弄ばれている気分だ。