別に彼女が誰を愛して誰の恋人になろうと俺には関係ない。人と関わる事が怖がっていた彼女が誰かに恋をしているのだって進歩したって事だろう。彼女が前に進もうとしているのであれば良い事じゃないか。
喜ばなければいけないはずなのに、何でこんなに苦しくなるのだろう。手の届かない所に離れていってしまうような気がして、変な胸騒ぎが収まらない。

「わたっ、し・・・は・・・っ!・・・好きっ・・・ですっ、けど・・・っ」

ふっと我に帰ると千里の様子がおかしかった。顔を赤らめて戸惑っているようには見えるけれど、それは恋ではない気がする。何か、他に重要で何でもない事を伝えようとしている気がするんだ。
違う。そうだ、やっと分かった。苦しまなくても良かったんじゃないか。千里は恋の相手について隼人に追及されていた訳ではなかったんだ。

「隼人。お前、案外悪趣味なんだなぁ?驚いたわ」