現実を受け入れられなくて気を失うかもしれない。そのまま植物状態になって寿命まで目を覚まさないかもしれない。ずっと三途の川を渡るか渡らないかと行き来しては躊躇っているかもしれない。

「か・・・、結羽くんも呼んでくれませんか?・・・下の名前で」

頬を赤く染めながら俺に頼む千里。そうだ。千里は死んでいない。まだ生きているんだ。俺の目の前でこうして息をして戸惑って照れながら生きているじゃないか。これからもそばで泣いて、怒って、笑って生きていてくれるじゃないか。

「わーったよ、・・・夢華」

彼女は耳まで真っ赤に染まると満面の笑みを浮かべて喜んだ。俺の大好きな笑顔はまだ目の前にあるんだもんな。手の届かない場所になんか行ってないんだもんな。
早とちる事なんて無いんだ。これからも寿命が尽きるまで俺たちはそばで寄り添って行く事が出来るんだ。