町の人のほとんどが俺たちを捜すのを手伝ってくれていた。そして、一緒に遊んでいた千里の兄がわざと置いていったんだって言った時は凄かったな。千里の母親は捜してくれた町の人に渋々でしか頭を下げなかったのに、祖母は土下座までして謝っていたっけ。千里の祖父は兄の頬を思いっきり平手打ちすると、無理矢理頭を下げさせていたな。

「柏崎先生?」

その時の、千里の祖父の表情は今でも覚えている。頭は下げていて雰囲気でしか伝わらなかったけれど、申し訳無さと悔しさが入り交じった表情で完全に怒っていた。
俺の家族もお騒がせしましたと頭を下げていたけれど、千里は後ろの方で一人で取り残されていたっけ。ちゃんと愛してもらえているのかなって凄く心配になったんだよな。まぁ、千里の祖父母を見ているとあの時の心配は無駄だったとすぐに分かったけどな。

「結羽って言わないと反応しねぇ」