弟が生きていた時は弟の寝癖を私が直してあげていたっけ。ちょっと来てここに座って、動かないで。色んな言葉で言い合っていたっけ。
寂しそうな表情でもしてしまっていたのか、柏崎先生は私をそっと抱き締めてくれた。柏崎先生の腕の中って優しくて温かい。とっても落ち着く。

「どうか・・・しましたか・・・?」

寄り掛かっていた体をムクッと起こして私から離れた柏崎先生。それはそれで寂しい気がしたけれど、我が儘ばかり言って柏崎先生を困らせる訳にはいかないしここは我慢しなくちゃ。

「・・・デート、・・・するか?」

柏崎先生の目に前髪が掛かっていたから表情はよく分からなかった。けれど、私の胸は確かに高鳴った。顔を逸らして私を見ないようにしているけれど、頭の後ろに手を回していた。柏崎先生もずっと行きたかったんだ。