「部室でやってる分にはインストで良いだろ。てかお前、ギター弾けないのかよ。お前もこの部の一員だろ」

スパッと切り捨てる唯野くんが私に話題をふってきた。強めの口調に面倒臭いという感情が滲み出ている表情が私の言葉を詰まらせた。ここでギターが弾けると言えば少しは見直して、少しは優しくしてくれるのかな。
ギターはやっているし、祖父母に頼まれて弾き語りもする。けれどバンドで合わせるようなエレキギターではなくて、一人でのんびりと歌えるようなアコースティックギターしか持っていない。それに皆と合わせられるほど上手くないし、皆の輪に入っていって仲を悪くさせたくない。
こんな私が幸せそうな皆の輪に入っていったら絶対に輪を取り乱してしまう。仲の良い人でさえ悪くなってしまうかもしれない。
可能性がある事を知っていて、ある程度なら弾けるから一緒にやりましょうなんて言える訳無いじゃない。私にそんな事、出来るわけ無いじゃない。