私の事をちゃんと分かってくれているんだと嬉しくなった反面、悲しくもなってしまった。無駄な気を使わせて、無駄に頑張ろうとして見抜かれて。自分の未熟さを思い知った。

「綺麗だろ」

先生の足がやっと止まった。車から降りてどれくらい歩いたのだろう。なれない靴を履いているせいか、いつもより辛い気がした。

「わ・・・っ、凄い・・・!」

ふっと前を向くと、そんな疲れを忘れられた。夕日に照らされて赤く染まる空と海。反射して光る波、雲に隠れるかもめ。有名な画家が描いていてもおかしくはないくらい、綺麗で幻想的な景色だった。
あまりの美しさに、声が溢れてしまった。それを隠すように繋がれていない手が私の口許を覆う。無意識の内で自分がなぜそうしているのかは分からないけれど、止める気にもなれなかった。