柏崎先生だから。そんな事は分かっていた。柏崎先生だからこんなに温かくて、安心できるんだって気付いていたはずなのに。なんで今まで分からなかったんだろう。
警察官にあの人の事を色々聞かれた後、私と柏崎先生はお姉さんたちと別れて先に家へ帰る事になった。いつものように助手席に乗ったのは良いけれどあの光景が頭から離れなかった。
弟もあの男の人のように死んでしまったのだろうか。苦しんでしまったのだろうか。痛かっただろうか。後悔が後をたたなかった。

「千里?」

私の頭を撫でて心配そうに覗き込む柏崎先生。気が付いた時にはもう、息がかかるほど近くにいて心臓が止まってしまうかと思った。
顔、絶対赤くなっていたよね。そりゃあ気付いたら柏崎先生が目の前にいるんだもの赤くなっちゃうよ。だって、好きな人の顔が目の前にあるんだから。