殺されると思った時、あの人が男の人の手を止めた。どうしてとあの人の顔を見ているとあの人は狂ったような笑みを浮かべて男の人の刃物を奪った。そして、男の人のお腹を刺すと今度は私に向かって刃物を突き立てた。けれど、その手から刃物は落ちた。あの人は気を失って私の目の前に倒れた。

「悪い!本当に悪い!!」

抱き締めてくれる柏崎先生の体だけが私を安心させてくれた。あぁ、私は今もここで息をしている。ちゃんと生きて柏崎先生の腕の中にいるんだ。
泣いてしまった。先生を抱き締め返して、先生の胸を借りて。ただただその温もりに甘えて泣いてしまった。

「せんっ、せ・・・っ!」

ずっと怖かった。ずっとこうして欲しかった。柏崎先生に触れたかった。声を聞きたかった。一人でいる事がこんなに心細いなんて思わなかった。