私には青春の1ページをテレビで見ているような感覚だった。青春とか憧れてしまうけれど、人に怯えて過ごしている私には無縁の世界。ずっと手の届かない場所にある不思議な世界。
皆から少し離れた所で会話を聞いているけれど、割って入っていこうなんて思わない。気分を害したくないし、私が入った所で邪魔になるだけだから。
ただ、柏崎先生が時々振り返って私の意見を訊いてくれるのが少し嬉しかった。皆の視線を集めるから怖くて答えたくなくて声が出ないけれど、私の言いたい事を察して皆に提案してくれて。メンバーの一員になった気分になれるから、柏崎先生のその行為が本当に嬉しかった。

「せん・・・じゃねぇや。島岡はどう思う?」

ただ母の旧姓である千里と呼ぶのは二人でいる時だけなのはなぜなのだろうと不意に疑問になる事がある。今みたいに間違えて言い直すくらいなら最初から千里か島岡、どちらかに固定してしまえば良いのに。