にこやかに、でも怒りのこもった笑顔で男の人たちに逆ナンの女の人たちを進める叶多くんが少し怖く思えてしまった。何度も腹黒いこの表情を見ているはずなのに、どうしてもなれない。

「帰れよ、邪魔なんだよ、うざいんだよ、何でわかんねぇんだよ、釣り合わねぇんだよ、分かれよ、鬱陶しいんだよ、鏡見ろよ、眼科行けよ、眼鏡かけろよ、自覚しろよ」

まだまだ言い足りない様子で店の蛇口を捻る陽翔くん。そして、ホースの先端を持って男の人たちにも女の人たちにも水をかけ始めた。そのあまりの水圧にその人たちは離れていってくれたけれど、まだまだ気が済まないらしい。水圧は弱くしてくれたけれど、今度は私たちの方に水をかけて始めたんだ。
ただ、そんな私に心配を言葉に出してくれたのは隼人くんだけだった。本当に心配している表情で訊いてきてくれた。

「大丈夫でしたか?夢先輩」