盗聴機か何かでもし聞かれていたとしたら。その時は先生がいなくなってしまう。私の手の届かない所へ柏崎先生が行ってしまう。
考えるだけでも嫌なのに、本当になってしまうかもしれないなんて。お姉さんに電話しているとどうしてもっと早くに気付けなかったのだろう。もっと早くに気付けていたら大丈夫だったかもしれないのに。
どうしよう。今日はこのまま帰りたくない。夜が明けるまで一緒にいたい。安全だって、デマだったんだって分かるまでずっと一緒にいたい。

「千里、皆に話そう。今は少しでも味方が多い方がいい。健を拾って千里ん家に向かうぞ」

柏崎先生は私の頭を優しく撫でると車を動かした。正直、乗り気ではなかった。もし下手に動いて犯人にこの事がバレてしまったら。もし被害が拡大するような事があったら。考えるだけで嫌だった。私が弱いせいで皆をこんな厄介な事に巻き込んで、困らせてしまう。