だってそうだろう。片思いではあるけれど、大切な人が一生消えない傷を負わされたんだ。本人に比べたら4分の3殺しなんて可愛い方だろう。
本当は殺してやりたいくらい腹が立つ。けれど殺して逮捕されたらその後、誰が千里を守ってやるんだと考えたら殺して逮捕されたらまずい。遠くからでも良いから見守ってやりたいんだ。
きっと安心ではないだろう。不安、良くて納得。彼女はため息と一緒に肩を落とした。そして、ずっと我慢してきたであろう涙を流し始めた。
うろたえたり、泣き止ませようとしたりなんて俺はしない。涙も1つの感情表現で、言葉に出来ない思いが胸の中にあるのだという1つの言葉、1つの声だと思うから。だからその涙が俺以外の人に見られないよう、上着のフードをそっと頭に被せてやった。そうすると、彼女の長い髪の毛が上手い具合に顔を隠して涙を見えなくしてくれるんだ。

「・・・ごめっ、なさ・・・っ。・・・のっ・・・!」