鼻をかんだ後、涙を止めようとする千里はどことなくいつもの悩んでいる雰囲気とは違った。いつものようにどうしようと悩んでいるのではない。どうしたら良いのだろうと深く悩んでいるように思える。

「・・・あの女の人、柏崎先生の恋人なんですか?」

悩んでいたから周りの言葉なんて耳に入っていなかったのかもしれないな。そういえばと思い出したような声のトーンをしていた。

「違う。臨時で来た教師なんだが、一方的に言い寄られて困ってんだ」

もちろん、俺はあの女と恋人ではないしなる気もない。勝手に言い寄って、勝手に騒いでいるだけだ。だから、千里に1つ頼もうかとも思っている。
利用したくはないんだが、あの女の前で俺の恋人のフリをしてもらえないかと思っている。そうすれば諦めがつくんじゃないかと思うんだ。