もう俺に出来る事は何もないんだと実感し、落ち込んでいた時だった。信号が赤になって止まっていると、体を震わせて俺に頼ってきてくれたんだ。

「柏崎・・・、先生・・・。助け・・・て・・・」

顔を両手で覆い、小さくうずくまってしまった千里を俺は放っておく事が出来なかった。千里は別に俺とあの女が恋人同士だと勘違いして喋らなかった訳じゃなかったんだ。他に悩みがあったから。でも、言おうか迷っていたから喋らなかったんだ。
取り合えず、よく来ていた海の近くに車を止めた。そして、近くにあった自動販売機から温かいカフェオレを買って千里の体に立て掛けた。
俺はと言えばコーヒーを片手に扉に寄り掛かっていた。全開にした窓から片腕を出し、顔を乗せては彼女から話をしてくれるのを待ってみたんだ。

「すみません・・・、ありがとうございます・・・」