この気持ちからは逃れられないと悟ってしまった。だから、今は気を逸らそうと思う。逃れられないのであれば、一時凌ぎに彼女以外の何かに気を逸らせばまだ何とかなるのではないか。そう思えたんだ。

「お前の兄貴に千里 歩希っていたろ。俺、そいつの同級生だったんだ」

全てを理解したような表情を見せる彼女はどこか怯えていた。まさか、強姦の相手がその兄貴なんだとか言わないよな。さすがに考えすぎだよな。実の妹に兄が手を出すなんてそんな話、漫画やアニメの世界だけだと思っていたのだが違うとか言わないよな。
もし本当にそいつが相手なのだとしたら、俺は自分を抑えられる自信が無い。顔すら知らないほど、全くの赤の他人であれば許せないと怒って壊れるまで物に当たるくらいで済むだろう。けれど、顔も名前も知っていて手を伸ばせば届く距離にいる人物であるというのであれば俺は制御できない。理性を保てない。本当に手を伸ばして4分の3殺しにしてしまうかもしれない。