こうなるって分かっていたんだ。傷つけてしまうって、怖がらせてしまうって分かっていた。だからそうならないように自分を抑えて今までやって来たのに全て水の泡じゃないか。
自分がここまで最低な奴だとは思わなかった。夢見心地であったとしても、してはいけない事をしてしまった。取り返しなんてつくはずがないよな。

「無理すんな。辛かったろ」

完全に嫌われた。もう俺にあの笑顔が向けられる事は無いんだ。泣いて甘えて、人のために怒って悲しんでいる所を間近で見る事はもう出来なくなるんだ。
何てバカな事をしたんだ、俺は。今更謝ったって遅いだろ。時間を戻せないのか。抱き締める前に時間を戻す事は出来ないのか。

「いえ・・・、その・・・」

千里の目線が定まらない。やっぱり動揺しているんだ。