なのにどうしてだろう。私が乗り越えたから。それともずっと寄り添ってきてくれた先生だから。汚されてきた恐怖なんて感じず、激しい胸の鼓動で上手く息が出来なかった。

「千里・・・。俺・・・、お前が好きだ・・・。好きなんだ・・・」

夢でも見ているのか。ただ寝惚けているのか。それとも本当に本気で言ってくれているのか。体が密着しすぎてドキドキが収まらない私には表情を確認する勇気も度胸も持ち合わせていなかった。
もし、本当だったらどうしよう。こんなに嬉しい事はないよ。でも、もし夢を見ているだけだったとしたら。本当に思っている訳では無いとしたら。
一人で何舞い上がっちゃっているんだろう、私。そんな事、あるわけ無いじゃない。柏崎先生と私は元副担任と元生徒。元顧問と元生徒。それ以下でもそれ以上でもない。それ以上になれる事もきっとない。そうだよ。きっと夢なんだ。これは私が都合の良いように型どった夢なんだ。