もう、親に隠れて甘やかしてあげられる弟がいない。申し訳ないとは思う。けれど、辛そうな柏崎先生を見ていると弟たちの事を思い出してしまって私も辛かった。
もう二度と会えなくなってしまったのだから。きっとまだ生きていてくれたのなら、寂しいと思うだけで済んだのかもしれない。けれど、弟たちは私のせいで精神的におかしくなってしまった母の手によって殺されてしまった。もう二度と手の届かない場所に、影も見えない場所に行ってしまった。

「千里・・・?」

ねぇ、先生。どうしてこの世の中は残酷なの。早く死にたいと思っていた私がまだ生きていて、どうして生きる希望に満ち溢れていた弟が死ななければならなかったの。どうして罪を犯したにも関わらず、反省もしていないような人がノウノウと生きているの。どうして罪のない人や反省して朝が来る度、夜が来る度に後悔しているような人が苦労して生きていかなければいけないの。