俺には俺のペースがある。言える決心が付いたらちゃんと言うさ。今はただ、こうして身を寄せているだけで良い。隣にいるだけで良い。俺の隣で息を吐ける、リラックスしてくれる。
それだけで良いんだ。今は心の拠り所として頼ってくれればそれで良いんだ。良いように使ってくれれば、それで彼女の心が満たされるのなら良いんだ。

「大丈夫か?」

彼女は何も言わずに頷いた。たぶん、大丈夫であるはずなのに涙だけが止まらないんだと思う。自分が気付かない内にひどく傷付いていた、精神的に何かに追い込まれていたのだろう。
昔から泣き虫だな、千里は。俺がいじめられて泣いて、鳥が巣立ちして泣いて。おたまじゃくしが生まれても泣いて。でも、その理由はいつも曖昧だ。
俺がいじめられて泣いた時は悲しくなったから。鳥が巣立ちして泣いた時はまた会いたいと思ったから。おたまじゃくしが生まれた時は嬉しかったから。