たぶん、クラスの委員長の家でクリスマスパーティをするからバス通の生徒でも迎えに行った帰りなのだろう。同じ学年、同じクラス以外の共通点がない生徒たちが車の中に肩を並べてヒソヒソと言葉を発していた。
俯いて表情を隠した千里だが、気持ちを隠し切れてはいない。後ろから何となく見ている生徒たちからは分からないかもしれないが、隣から見ている俺には分かる。千里の手を包んでいる手袋にキュッと力が入っている事が。
逃げ出したいんだよな。この場から立ち去って人の視界から消え去りたいんだよな。自分を守るために人の感情が届かない場所へ行きたいんだよな。

「カシザキも来いよー」

「行かねー」

「ノリ悪ー」

「パーティなんてガラじゃないの知ってんだろー。若い奴らだけで楽しめー」