その日は物を教室に忘れたまま帰った。その忘れた物にあいつが気付き、手を引いてくれないかと待ってみる事にしたんだ。けれど、あいつは次の日もその次の日も島ちゃんの許へやってきては弄んだ。
純情な彼女に漬け込んで、自分に惚れている事を面白がっているんだ。演技をしている自分に惚れている事をバカにして笑っていたんだ。

「お前、最低だな」

たまたま中学へ来ていたあいつに、俺は言った。人の心を弄ぶような最低な人間が何で教師なんて仕事しているんだ。一体、何を教えるために教師になったんだ。
教師になったのは、島ちゃんのように気持ちを弄ぶための的を見付けやすかったからじゃないのか。だから、結婚もしないで教師を続けているんだろう。
結婚すれば弄ぶための自由な時間がなくなるもんな。一人の女を死ぬまで愛していかなければいけないもんな。それが嫌だから結婚もしないんだろう。バカな生き物だって女の事を見下しているんだろう。