島ちゃんは俺を心配して、生きている事を知ると本当に安心したような表情で良かったって笑いかけてくれた。そして、暇ならおいでよと言って、ギター教室の生徒募集のチラシをくれたんだ。
最初は行く気がなかった。ギターなんて父さんに買ってもらえるわけないと思っていたし、その時期は丁度テストが近かったから今は勉強に集中しなきゃっておもっていたんだ。

「いらっしゃいませ」

それから2ヶ月経った4月も、島ちゃんは俺にその笑顔で接して来てくれていた。だから少しだけ、ちょっとだけ体験してみるだけ。そう言い聞かせて、島ちゃんにもそう言って授業に参加させてもらったんだ。
今まで俺にはなかった知らない愛の世界がその教室には広がっていた。右を見ても左を見ても笑顔ばかりで、島ちゃんも間違えた時には素直に謝って笑い話に変わっていた。
俺が知らないだけで、ドラマや漫画じゃなくても幸せと呼べる世界があったんだ。