よく戦争などで離れ離れになり、亡くなったと思っていた人に再会出来たなんて物語りがあるだろう。多分、その喜びと同じくらい舞い上がっている自分がいたんだ。

「ケーキありがとうな、千里。美味しかったぜ」

「あ、いえ。こちらこそ、ありがとうございました」

目は合わせてくれないけれど、動揺しているのはすぐに分かった。動揺したり、混乱してテンパったりしている時、千里は左側の髪の毛を手でとかす癖がある。今もとかしている所を見ると幼い頃の癖はそのまま変わっていないのかもしれないな。
少し安心している俺がいた。見た目が結構変わっていたからだ。幼い頃はテディベアの似合うほんわかした可愛い女の子だったのに、今は裁縫道具が似合いそうな綺麗で清楚な女の子になっていた。
昔はただ、唯一理解してくれる彼女に会いたかった。俺を男として見てくれる彼女に会って、日常から解放されたかった。