「そうかぁ・・・、良かった・・・。しかし、申し訳ありませんでした」

何事もなかったという事に安堵したカシザキだったけれど、不快にした事は変わり無いと思ったらしい。別に何とも思っていなかったし、腰の低い人なんだなって彼女の事を知れたから良しとしようとしていた。だから、謝られるあれはないと思っていたから俺もカシザキにこう言ったんだ。

「い、いえ。気にしないでください。これからお世話になる先輩ですし・・・」

正直、ここまで言うつもりはなかった。一度だけ遠目に会っただけなのに、覚えているなんてと気持ち悪いと思われるのも嫌だったから。
目を見開いたカシザキとキョトンとした顔で不思議そうに見詰めてくる島岡先輩を見て、やってしまったと後悔した。だって、女の子なら純粋で可愛いなで済むだろう。でも、そこそこ身長があり、目付きが悪い男の俺が彼女の事を覚えているんだぞ。俺なら嫌う。