よく遊んでいた吹奏楽の生徒や隣の家に住んでいる俺の存在にも気が付いていない。きっとこの先も俺から伝えないと昔、そんな約束をしたなんて思い出せないだろう。隣に住んでいる美人四姉妹で知られていた末っ子の男の俺だと気付かないだろう。
千里の家の隣、俺の家であるピアノ教室。姉たちはこの町では美人で有名な3人姉妹だった。けれど幼い頃の俺は女のような顔立ちをしていて、中学を卒業するまでは男装の趣味がある美人四姉妹の末っ子として知られていた。
そんな女の子にしか見えなかった俺を彼女は最初から男として接してくれた。今となっては何事もない、ただショートヘアで男物の服を着ていたから男の子だと思っていたのだろう。けれど、当時の幼い俺からしたらやっと分かってくれる人が現れた。神様がくれた運命の人なんだと思えるくらい大きな出来事で、この町から出てしまった後もずっと気になっていた。
もう一度会いたいと思いながら12年。やっと彼女に再会できた。彼女が転入の挨拶に来た時なんて、嬉しくて心臓が止まるかと思ったさ。