「結羽ちゃーん、夢華ちゃんがねー?」

夢華。本人がいる訳じゃないのに異常なほど反応してしまった。何かあったのか、ちょっとしたら俺を呼んでくれているのか。そう思って母の方へ勢いよく振り返ってしまったんだ。

「あら!玲衣ちゃん、真希ちゃん、真衣ちゃんおはよ~」

のんびり挨拶なんてしてなくて良い。千里がどうしたのか早く言ってくれ。俺の気持ちは姉たちの前で格好悪いから収まってくれと思っていた。けれど、そんな気持ちとは裏腹に心は焦って仕方なかった。
母は姉たちの顔を見ると千里の話を口にする事はなかった。世間話や思い出話に花を咲かせてはキャッキャッと騒いでいたんだ。
そんな四人に苛立ってしかいなかった。そして、フッとあいつの言葉を思い出していた。千里の気持ちを弄ぶな。どちらかと言われれば、俺が家族に遊ばれている気がするんだが。