何とも言えない複雑な思いがある俺に容赦はない。ギターの音が聴こえたからか、看護師をしている姉がそういえばと他の二人に話しかけていた。

「そういえば、ギター教えてくれてる子いるじゃない?」

「あー、お母さんの思い付きに付き合ってくれてる気の優しい子ね」

「私、あの子と連絡先交換したいんだけど」

思い思いに何だかんだ話しているなと思っていたけれど、お茶を飲む前に聞いておきたかった。姉が次に言った言葉で口に含んだお茶を吹き出してしまったんだ。

「珍しく結羽が惚れてんのよ」

叫びながら立ち上がる長女に、冷静に驚く三女。次女はというと人の気も知らないで汚ない、お茶が勿体無いと俺に怒ってきていた。