昔は兄たちも私が母と一緒に作ったお菓子を美味しいと笑顔で食べてくれていたんだよね。昔を思い出して苦しくなってしまった私の心の救いは、柏崎先生にある目立った八重歯が兄たちには無いという事。

「お前、料理上手いんだな」

全て美味しいと言って食べてくれた柏崎先生。母の許にいる弟たちが少し心配になった。私がいなくなったせいで、義父や兄たちの欲情が暴力という形で弟たちに降りかかっていないか不安になってしまったんだ。

「口の回り、酷いですよ」

「あ、マジだ。ウェットティッシュ無い?」

鞄に入っているウエットティッシュを渡すと、柏崎先生はありがとうと言いながら口の回りに付いた生クリームやチョコレートを拭き取っていた。そして、特に何を話すわけでもなく沈黙が続いた。