「お待たせ、皐月」

「!」


準備室の机に寄りかかり、窓の外を見ていると神戸が来た。


今、呼び捨てー…

「神戸、学校では…」

「いいじゃない、二人きりなんだし」

「いや、でも…」

「皐月、学校が始まってから一度もデートしてくれないじゃない?そろそろ私も怒るわよ?」

腕を組み、目の前まで来た神戸。

その様子から、相談は口実かとほっとした。

「…赴任してきたばかりで忙しいんだよ。わかるだろ?」

同じ教師として。という意味を込めて言った。


「わかるけど、私達付き合ってるんだよね?あの日以来、プライベートで会ってないけど」

最後に会ったのは、異動する前。

それから何回か神戸から連絡あったが、断っていたのは俺。

忙しかったのは本当だけどー…





「皐月」

「!」


神戸の腕が首に回る。

「…他に好きな人いるの?」

「!」

耳元で囁かれた言葉。

"好きな人"ー…



「…いないよ」

回された腕を離そうとするが、神戸が拒む。


「神戸…」

「じゃあ、キスしよ。ここで」

「!」

「…学校だ、ここは」

「私をほっといた罪よ」

クスクスと笑いながら、神戸の顔が近づいてくる。


「かん…」

「黙って」


そう言い、神戸は唇を重ねてきた。


柔らかくて暖かい唇。


甘い香りー…




神戸と付き合い始めた頃を思い出した。



これでいいー…


俺はこの道を選んだんだ。



そう思い、目を閉じた。