プレイボーイ男子の溺愛方法〜早く俺を好きになってよ〜

「そんなに好きなら、言いたいこと言うべきじゃない?」


私が言いたいこと?


そういえば、翔くんも言ってた。



『ひなちゃんって言いたいこと言ってくれないね』って。


確かに一理ある。


「ちゃんと言わなきゃあいつに伝わんねーよ?」


ポンッと優しい手が私の頭に乗っかる


思っているだけじゃ……


伝わらないーーー。



「千尋くん、私……明日ちゃんと話してみるよ!」


「ああ。頑張れ。ちなみに俺、まだお前に未練タラタラなんだけど。」


「ええっ⁉︎」


最後に何だか爆弾発言をされた。
千尋くん……まだ私が好きだったの?



「だから今日、ほんとはお前を奪ってやろうって思ってた。だけど…」


千尋くんは笑った。


だけど、その笑顔がすごく
切なく感じたんだ。



「できなかった。矢吹のことで辛そうにしてるひな子を見てたら。笑ってはいたけど、お前すっげー辛そうで……」


「……」


初めからわかっていたんだ……


千尋くんっ……!


「矢吹に取られんのはシャクだけど、俺にとってお前が泣いてることの方が嫌なんだよ。だから……頑張れよ、ひな子。」


「ふ、ぇっ……ありがとう、千尋くんっ……」


好きになってくれて……
ほんとにありがとうーーー。


「こら!泣くな!頑張るんだろ?」


「うんっ!」


無理に口角を上げて笑った。
千尋くんはどれだけ辛かっただろう。


この決断をするのが。



私だったらできなかった。


千尋くんの無理に笑った顔……


見てたら私まで悲しくなったよ。


だけど、千尋くんに背中を押された。


いつも、いつも千尋くんはこう。


私のことを助けてくれる。


ちゃんと言わなきゃ。
翔くんに。


だって、言わなきゃ伝わらないもん


そうだよね?千尋くんーーー。
その夜ーーー


わたしは電話をかけた。
翔くんに……。


プルルル…と、コール音が鳴るたびに心臓の鼓動が聞こえる。


『もしもし。』


で、出たっ!


翔くんだ!



翔くんの声はひどく低いものだったけど、ちゃんどわたしの電話に出てくれた


「も、もしもし!翔くん?」


『うん。俺の携帯だから。で?何か用?森山とデート楽しかった?』


やっぱり、翔くんは怒っている。


怖くて今すぐにでも電話を切りたかった


でも、ここで逃げちゃダメだ。
「ごめんね、翔くん……。わたしやっぱり、翔くんのこと好きだよ。」


『じゃあなんで俺のこと避けるんだよ』


「だって、翔くん……浮気してるよね?」


聞いた!
聞いてしまった!


電話越しから『はっ?』と冷たい声


「だって有香さんと仲よさそうにしてたよね?」


『それだけで浮気って思うの?』


それだけって……


抱き締めたり、好きって言ってたじゃない。


立派に浮気になると思うけど。
「翔くん、勝手すぎるよ。有香さんに好きって言ってたくせに!」


感情が高ぶってしまい、携帯電話に怒鳴った


『言ってねーよ!ひなちゃん、勘違いしてんじゃねーのか⁉︎』


電話越しから翔くんの怒鳴り声が聞こえる。


勘違いなわけないでしょ。


わたしはあの日、全部見たんだよ?


これだったら素直に『有香が好き』って言われた方がマシだ。


どうしてそんな嘘をつくんだろう?


もう呆れて怒る気にもなれない。


「もういいーーー。」


だからそのまま通話終了ボタンを押した
「んっ……ふ、えっ……」



翔くんのバカ。


バカ、バカ、バカ。



わたしは枕に顔を埋めて泣いた。


ごめんね、千尋くん。


ちゃんと話せって言ってくれたのに
できなかったよ。


私たちはもう無理なんだ。


翔くんとは別れるしかないんだーーー
【翔side】


「はぁ……」



次の日、朝から教室で溜息。


「翔?ひなちゃんと仲直りできたか?」


溜息を吐く俺の隣では、大也が心配そうに声をかける。


「昨日、電話かかってきたけど浮気したとか言うし……ほんと、意味わかんない。」


いきなりなんなんだよ、ひなちゃんは


「まさか……」


大也が思い出したように呟く。



「お前、有香ちゃんと練習してたとこ見られたんじゃねぇの?」


「は?」


俺は目を見開いた。
まさか……


見られてたのか?


それだったら避けられていたとも
つじつまが合う。


「つまりだ。大也、お前のせいってことだな?」


「そうなるのかな?」


大也をギロリと睨むと、奴は苦笑した


笑い事じゃねーよ。


そう……


俺が有香を抱き締めていたのは
ただの芝居。


頼まれたんだ。こいつに。


実はこう見えても、大也は演劇部。


今週に控えた演劇部の大会があるらしいのだが、大也は合コンで知り合った女の子と会う日が重なってしまったため、俺に頼んだというわけだ。




当然、最初は断った。


ハグのシーンとか、愛を囁くシーンがある!


冗談じゃないと思って断った


俺はひなちゃん以外の女の子にそんなことしたくねーから。