「こう見えてけっこう切実なんだけど」

西崎は眉毛を下げて苦笑いをしている。


「でもごめん」

「うーん。まあ、仕方ないしお前が謝ることじゃねーよ」

強引なところもあるけど聞き分けの良さは変わってなくてホッとした。西崎は部屋の電気はつけずに中に入って、まだ眉を下げたままの顔だったけど、


「今晩だけ世話になるわ。おやすみ、雨宮」

パタンと閉まったドアが我が家なのに他人の音。


西崎が呼ぶ〝雨宮〟は全然違和感がなく、すんなりと私の胸に落ちる。


幼なじみとは名ばかりの私たちはもう関係が切れている状態で。

それを何年も続けてきたっていうのに今日突然西崎がうちに来て、そんな空白がなかったかのように飛び越えてくる辺り、本当に油断できないっていうか……。

私の嫌いなタイプを突っ走っててくれて安心した。