千晶くんは、かっこよくて。
憎まれ口も叩くけど、優しくて。
甘えただけど、頼もしくて。
そんな千晶くんがいる毎日が当たり前で、ずっとこんな日々が続くと思っていたけれど。
思ったより早く、そんな日々は終わりを告げることになる。
「黒木紗和さん、いますか?」
「え」
ある日のお昼休み。
友達と一緒にお弁当を頬張る私を呼んだのは、見ず知らずの男子。
黒縁メガネで冴えない感じの彼は、緊張しているのか顔が強ばっているように見える。
「ちょっと紗和、告られるんじゃない?」
「ええ!?」
「昼休みに突然の呼び出しなんて他に何の用があるってのよ。ほら、ビビってないでさっさと行け!」
友達に無理矢理送り出される私。
そのままその男子の後をついていくと、たどり着いたのは人気のない体育館裏。
「あの、俺、2年4組の佐藤真琴っていいます。今日は黒木さんに話したいことがあって…」
4組ってことは、隣の隣のクラス。どうりでみたことないわけだ。
それにしてもめちゃくちゃ目泳いでるし、顔は真っ赤だし、若干挙動不審だし、もしかして本当に告白だったりして。
やばい。そう思うと何だかちょっとドキドキしてきたかも。
なんて思っていると、佐藤くんは意を決したように深呼吸をして。
「っ、俺!黒木さんのことずっと好きでした!」
き、きた!
黒木紗和16歳、人生初の告白いただきました!!
初めて他人から好きだなんて言われて、どきっと跳ねる心臓。
「一目惚れで、今まで話しかける勇気もなくて初対面みたいなもんだけど、俺、本当にすきなんです」