「っ、やっぱり、田中先輩がすき?」



「はぁ?」




「それならそうだって、最初から言ってよっ!」





もうやだ、と呟いたかとその場に思えばしゃがみこんでしまった紗和。




ちょっと、こんな人だらけの街中で目立っちゃってるんですけど。




しかも俺が泣かせたみたいになっててめちゃくちゃ見られてるんですけど…って、みたいじゃなくて、泣かせたの俺か。




「紗和。家で話そう?」




「嫌だもん!もう千晶くんとなんか話したくないっ!」




あー、しぬ。死にそうにショックなセリフだわそれ。




大ダメージを受けながらも、なんとかこの状況をどうにかしたい俺は紗和の背中と膝の裏に手を回して持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこだ。




「やだやだやだ!!おろして!!」




低身長な上に痩せ型で軽いから、子供みたいに簡単に抱き上げられてしまった紗和はジタバタともがくけど。




「おろさないし、離さないよ。家が嫌なら、ここで話聞いてくれるまで帰さない」





ここで離したら、傷付けたまま。




それだけは、絶対に嫌だ。