【千晶side】
「それはそれはおめでとうっ」
ある日の放課後。
2時間近く並んでやっとの思いで入店したカフェのテラス席で、運ばれてきたパンケーキに目を輝かせるのは、彼女の紗和じゃない。
「私の協力あってこそよね〜もっと感謝していいんだよ〜」
「…あんたそんなでっかいパンケーキ奢らせといてまだ欲しがるか」
「やだ、人聞きの悪い。千晶が言い出したことでしょ」
あぁ、そうだったそうだった。
この美人、田中先輩。
前年度のミスコン優勝者。好物は甘いもの。特にパンケーキ。
自分より美しいものが許せないというとんでもなくナルシストな性格らしく、ある日突然喧嘩腰で俺に声をかけてきたこの人。
何だかんだと話しているうちに意気投合し、今ではすっかり友達感覚なわけですが。
「感謝してますよ。田中センパイ」
この間、切羽詰まった俺はこの人に協力を仰いだのだ。
「まあ私くらいの美人じゃないと幼なじみちゃんもああはならなかったよねぇ」
パンケーキを頬張りながらサラリとナルシストを発動させているが、まあもう慣れた。
俺の想い人である紗和がどっかの男に告白されたとはしゃいでいるもんだから、さすがの俺でも焦って。
こんなとこで取られてたまるか、と一か八か田中先輩という兵器を投入して荒療治を試みたわけである。