「千晶ー!?」
「ちょっと佐野くん、どこいったの!?」
「もう、また逃げられたっ」
バタバタと廊下を走り回る足音。
息を切らすみんなの目的はただ一つ。
「……ねぇ、みんな探してるよ?」
「バカ紗和。静かにして」
空き教室の教卓の陰に隠れて、後ろから抱きしめるような体制で私を抱え込んでいる、この美男子。
佐野千晶(さの ちあき)
またの名を、王子。
「紗和だって、俺が他の女に捕まったら嫌でしょ」
「私は別に関係ないし…」
「相変わらず冷たいねぇ、幼なじみなのに」
そう。
このやたら顔が整った男は私の幼なじみ。
無造作にセットされたダークブラウンの髪。
程よく筋肉のついた長い腕。
ぱっちり二重の大きな瞳は垂れ目がちで、笑うとにっと横に伸びて愛らしい。
鼻に木の枝でも入ってるんじゃないかと疑うほど通っている鼻筋。
色白で、ニキビ一つ見当たらないキメ細やかな肌。
うん。どっからどう見ても完璧すぎる容姿。
でも、一つ困ったことがありまして。