楓、という声に振り返る
さっき会ったスーツ姿とは違い
ラフな格好に懐かしさを覚えた


『ごめんね、忙しいのに』


「いや、大丈夫。楓の誘いならいつでも」


そう言いながら
私の向かいに座る健ちゃん
どこで話そうか、悩んだ
真面目な話だが二人きりは避けたかった
亮平さんと何度か来たことがあった
ダイニングカフェを選んだ


まだ食事をしていないという健ちゃん
だが、食事をしに来たわけでは無い


『食べるのは、話が終わってからでいい?』


そういうと、手にしていたメニューを戻し
のみものだけ、とビールを頼んだ


「で、話ってなに?もしかしてさっきの返事かな?もしかして、もう出てきたの?」


嬉しそうに話す健ちゃんの笑顔は
昔と変わらない