ざわざわ、と後ろが騒ぎ出す
知らず知らず声が大きくなっていた
それに気がついた時には後の祭りだ



「笹倉が横峰部長を振った」


その言葉が社内中に広まるのは
時間の問題だ



『次から自分で煎れてくだい』


それだけを言い頭を下げ
さっさと自分の席へ戻り仕事を始める
お盆を戻さないといけないのに
それすらもしない

だって
この場から離れたら
いやの話が嫌でも飛ぶ
私が戻ればその話もなくなるが
その分、変な空気になってしまうだろう

…いや、今でも変な空気だ



「楓先輩…あればまずいですよ」


心配そうな里奈
うん、わかってる
でも、止まらなかった
だから後悔でしかない