子供たちは留守番だと聞くと騒ぎ立てた。


「なんで留守番なの!?連れてけよ!」


「遊びじゃねえっつの。チビ勇者たちはオレの代わりにここを守るのが仕事!」


その一言でコハクそっくりの双子は顔を見合わせて胸を逸らした。


「ふ、ふん、そこまで言われたら仕方ないな…」


「パーパ、私も…駄目…?」


「ああエンジェル!お前を連れてきたいけど危険な旅なんだ!…お前相変わらず食っちまいたいほど可愛いな!」


末娘溺愛の魔王が雨のようにエンジェルの頰にキスする中、ラスは幼馴染の側から離れず近況を語り合っていた。


「ティアラと子供を置いて出てくのは寂しいでしょ?よく許してくれたね」


「彼女は元々レッドストーン王国の王女だし、僕ひとり居なくても大丈夫だって送り出されたんだ」


鎧を脱いで軽装になったリロイの周りには双子たちが駆けずり回り、いつも主役でありたい魔王は翌朝出発すると決めて街の雑務を片付けながら、ちらちらラスに視線を送る。

屋上に居る黒いドラゴンに乗っていけば目指す街トラントなどすぐだが、道中の街も見て回りたいとリロイが言い出したため、馬での旅となる。

もちろんラスは馬車なのだが、魔王が危惧しているのはーー


「邪魔者が居たらイチャイチャできねえじゃねえかよ…」


つまりはそこが焦点で、今夜が山場。

子供は何人居ても構わないし、ラス至上主義の魔王は早くラスとふたりきりになりたくてそわそわしていた。


「な、なあ、そろそろ寝ようぜ。明日からは強行軍だからな」


「あ、そうだね、リロイゆっくり寝てね」


「うん、ありがとうラス」


密かに魔王がガッツポーズをしたがーー


「しばらく会えないんでしょ?ママ、一緒に寝ていい?」


「うん、いいよ」


「…はっ!?」


「?コー、どうしたの?」


「や…なんでも、…ありません…」


またもやがっくりさせられて、お楽しみ予定だったその夜は家族全員ひとつのベッドで涙を偲んで眠った。