息を上げながら駆けてきたディノは、浜辺に居るはずの人魚がやってきてーーしかも足があることに驚愕して言葉を失っていた。


「こ、これはどういう…」


「それがよく分かんねえんだよなー。オレも足が生えててびっくりしたし」


コハクがすっとぼけると、アマンダはよろよろと歩きながらディノの腕に掴まって嬉しそうに見上げた。


ーーこの人魚を一目見た時から恋に落ちて、皆に見つからないように必死に隠してきたが…どういうことなのだろうか?


「アマンダ…」


「…!…っ!」


口をぱくぱくさせて何かを訴えるアマンダに眉をひそめたディノはコハクに何事かと声を荒げた。


「どういうことですか!?」


「話せないらしいんたよな。よろよろしてるし弱ってんのかも。お前んとこで世話してやれよ」


「それは…いいですが…」


「ラス!これは一体…」


騒ぎを聞きつけてリロイが駆けつけると、ラスは嬉しさのあまりリロイに抱きついて満面の笑みになった。


「アマンダに足が生えたの!」


「いやでもそれまほ…むぐっ」


ラスがリロイの口を両手で塞いだ。

魔王は早速ラスを引き剥がしにかかり、胸に抱きしめて二階を指す。


「じゃっ、俺たちは明日発つからさ、ゆっくりさせてもらうぜ」


何か言いたげなリロイを従えてコハクたちが二階へ向かい、残されたディノは人目がないことを確認してそっとアマンダの肩を抱く。


「アマンダ…」


オレンジの髪と目は美しく、ほっそりした足はなんとも儚く少し震えていた。


「とりあえず僕の部屋に行こう。抱き上げるよ、いいかい?」


こっくり頷いたアマンダを軽々と抱き上げたディノは、その軽さに驚きつつ螺旋階段を上がる。


お互いに、夢のようだった。