魔王のスパルタレッスンの末なんとか歩けるようになったアマンダは、足が動くようになって何度もその足を撫でていた。


「そんだけ歩けりゃいっか。よし、城に行くぞ」


アマンダにはディノに女の影があることは伝えていない。
そもそも元から障害の多い恋。
コハクにとってはアマンダの何もかもが研究対象であり、恋が成就しようがしまいが関係ない。


「あーチビに会いたい!ほら、手貸してやるから行くぞ」


コハクの腕に掴まってよろよろと歩き始めたアマンダはずっと足元を見ている。
よほど嬉しいのか、呪いのせいで話せなくてもその歓喜の様はコハクにも伝わる。


「よーし着いた。いいか、お前は話せない。だけど王子…つーか王子じゃねえんだけど、ディノにどんな方法でもいいから告白しろ。成就すればその足は本当にお前のものになるし、声も戻るからな」


ここまでお膳立てしてやったのだからこれ以上は協力する義理はない。

ただラスがふたりをくっつけたがっていたから手を貸してやっただけだが、人魚に出会えたのはラッキーだったーー


「コー!お帰りなさいっ」


出迎えてくれたラスをハグしようと腕を広げたもののラスは素通りしてまごついていたアマンダに抱きついた。


「わあっ、足がある!コーの魔法なのっ?」


「おう、すげえだろ!」


「うん、すごいすごい!アマンダ良かったね!」


ありがとう、と口をぱくぱくさせて伝えてきたアマンダにラスが首をかしげる、


「話せないの?」


「足をやる代わりにな。等価交換ってやつだ」


「ふうん…でも嬉しいんだよね?」


大きく頷いたアマンダにまたラスが抱きつく。

それを羨ましげに見つめつつ、階段を駆け下りてきたディノがどんな反応をするかーー全てを記録するため珍しく黙って見ていた。