数時間後、知由と雪兎は正広の前に座っていた。
「悪いが、その『ひろかず』って奴は捕まえられないぞ? 脅迫していたとしても、その証拠がない」
話を聞き終えた正広は、きっぱりと言い切った。
だが、知由はうろたえることなく、むしろ何かを企んだいるような笑みを見せた。
「わかっている。だから、種をまいた」
それを聞いて、正広は頭を抱える。
「また勝手なことを……」
「何したの?」
雪兎に聞かれ、知由はますます楽しそうに笑う。
「奴のパソコンに、夢郷未咲に新しい男が出来た、と写真付きでメールを送った」
「まさか一弥さんの写真じゃ……」
雪兎は違うと言ってほしいというような表情をしているのに、知由は否定しなかった。
「そのまさかだ。だが、一弥なら少々襲われても問題ない」
「大ありだよ!?」
平然と言われたものだから、雪兎は勢いよく立ち上がった。
「お前は奴の運動神経を知らないのか」
それでも知由の態度は変わらない。
それどころか、呆れているようにも取れる。
「知ってるけど……でも、危険だよ! 何してくるか……」