すると、誰かが三神君の背中を思いっきり押した。
「いってーな!なにすんだよ、麗!」
三神君は押した犯人、麗ちゃんを押し返した。
「ごめんごめん。見かけたから、ちょっと押してみた」
「はあ?ふざけんなよ。もし西野が巻き込まれたら、どうするつもりだったんだ?」
「そのときはそのときだよ。ね、花?」
「え?あ、うん……」
二人の仲の良さを目の当たりにして、私は勝手に、一人で嫉妬していた。
おかげで、麗ちゃんの言葉への反応が、遅れてしまった。
そのせいか、麗ちゃんは不思議そうな目で、私の顔を見ていた。
「ねえ、花……なんで今日は地味なの?」
……そっちか。
「私、道具あるから、いじってもいい?」
麗ちゃんは私の返事を聞くより先に、そう言った。
……質問した意味よ。
「うん、いいよ」
そして、麗ちゃんは自分のクラスに荷物を置いて、私たちのクラスに来た。
私は自分の席に座らされ、麗ちゃんに髪を結ってもらう。
「化粧は無理でも、髪くらいちゃんとしてきなよー」