「無事でよかったよ、千秋」
体を起こす千秋を支えながら、野澤君が声をかけた。
「ホントだよ、もう。死んだかと思った」
「嵐士、麗……って、勝手に殺すなよ」
久しぶりに見る、千秋の笑顔。
「椛も来てたのか」
「明星さんに捕まっただけだから」
椛さんはそっぽを向いた。
初めて会ったころとは真逆の反応。
「そっか。あと……花」
優しく私を呼ぶ、千秋の声。
すべてが重なって、私は泣きそうになったけど、我慢した。
笑顔でおかえりって言うって、決めてたから。
お母さんのときは我慢できなかったけど、今度は我慢するんだ。
「花、心配かけてごめんな?」
泣かないように我慢してるのに、千秋は泣かせにかかる。
我慢のせいもあってか、声が出なくて、私は首を横に振った。
でも、このままだと私は千秋になにも言えない。
「千秋……おかえり!」