隼人side


 午後の閉祭式は、多少の遅れはあったものの、滞りなく進み、終わった。


 一般生徒が体育館から出て、祭の後片付けに入る。
 大量の椅子、照明器具、床に貼り巡らされているコード、お立ち台、コーン、そして大小のゴミたちを、執行部と実行委員で、綺麗に体育館から排除する。


 学校祭2週間前から土日も返上し働いて、1週間前からは午後から夜まで、1日前と学校祭の2日間は朝早くから丸1日、学校祭のために動き続けてきた執行部は、生徒会室に戻っても、しばらく無言だった。


 ただ、3年生の先輩が1言、



「俺、明日の後片付け含めたら、29連勤・・・・・・」



 憐れすぎて、お疲れ様ですの言葉すら出てこなかった。




 学校祭の余韻に浸るのもそこそこに、執行部は解散した。明日も明日で大仕事はまだ残っている。

 校舎から出て、自転車置き場まで、夏菜と歩く。

「29連勤はヤバかったね」
「先輩は印刷作業があったから、3週間前の土日休めなかったんだな」
「3週間前の平日はともかく、2週間前からは夜までの作業だったから、この間は実質部活生よりハードな29日だね」

「「はぁ・・・・・・」」


 俺たちのこの溜息は、学校祭が無事終わって良かった、という安堵の溜息だ。

 俺たちや先輩方が、身を粉にして尽くしてきた学校祭が、もし失敗に終わってたら、正直もう立ち直れない。



 俺たちは並んで、自転車をこぎ始める。

 夏菜は何も言わず、俺の言葉を待っているようだった。


 俺はしばらく、話すことをまとめるために黙っていた。


 そして、しっかり考えの定まったとき、俺は覚悟を決めた。


 乾いた汗に汗を重ねて、すっかりベタベタになった身体とTシャツの間に、前からの風がすり抜けていく。



「多分、知ってると思うけど、

実希は、この辺りで有名な、『援交少女』だ」