「じゃあ、麻奈ちゃん好きな人は?」
朱里ちゃんが私に向かって言う。
「わかんない」
そう。わかんない。好きなのかどうか。
「じゃあさ、気になってる人は?」
花穂ちゃんが言った言葉に対して落ち着いて考える。
気になってる人......
「圭介くん」
これは、迷わない。まだ、好きだって分かったわけじゃないけど。
「やっぱりか!
どこが好きになった?」
「私のことを考えてくれるところ、かな」
「優しいもんね、佐藤くん。」
「1回気になったら、圭介くんのこと、見るようになっちゃって、そしたら、どんどん...」
あれ?
「どんどん?」
花穂ちゃんが何かを察したように、少しにやけながら私を促す。
「好きになった。」
好きに...なった。
「え、好きになったの!?」
「う、うん。今」
朱里ちゃんがびっくりしたように言った言葉に、押されるようにしてこたえた。
今。改めて、圭介くんのことを考えたら、自分がただ気になってるだけじゃないって、わかった。
──好きって、こういうことか。
「良かったじゃん。答え見つかって。」
やっぱりわかっていたような口ぶりで言う花穂ちゃんは、もしかしたら分かってたのかもしれない。
私が、目を背けてただけかも。
「明日からの麻奈ちゃんアピールに期待だね~」
「アピール!?
そんなのしないよ!」
「えっ!しないの!?」
「朱里ちゃんだってしてないじゃん! 」
「ちょ、ちょっとやめてよ!
まだ私の番じゃないんだから!」
「ぶっ!」
突然変な言い合いを始めた私と朱里ちゃんを見て、吹き出した花穂ちゃん。
「何2人ともよく分からないことで言い合ってるのよ。
次は朱里ちゃん、でいい?」
笑いをこらえるように言った花穂ちゃんの言葉で、私の番は終わった。
──これは、好きってことなのか。
初めて知った〝好き〟に少しドキドキする。
初めての感覚。
なんだか、嬉しいような、少し不安になるような、意識したら胸がドキドキして、顔が熱くなる。
「わかった!次は私だね!」
元気よく言った朱里ちゃん。
私は、〝好き〟の感覚に浸りなが、朱里ちゃんの中野くん話を聞こうと思う。